まるで音が無くなったかのようで、やけに空気が熱い。昇ちゃんの返事を待つ時間は、ひどく長く感じた。
「……やだ」
「や、矢田?」
あたしを一瞥し、眉を顰めると、また、昇ちゃんは目を逸らした。
「……言いたくねぇ」
そっちか!
記憶に残る“矢田”らしき人物を、必死になって探していたのに。昇ちゃんは、「言いたくないから、嫌だ」と。
でも、聞きたい。昇ちゃんが、面倒臭さも気にせずに殴っちゃったような相手が、どんな人なのか。ちゃんと知りたい。
見つめていた視線を、落とす。拗ねてみせた訳じゃなく、昇ちゃんの手が目に入ったから。その大きな優しい手からは、想像出来ないと思ったから。
「ちゃんと、聞きたい」
昇ちゃんはまだ目を逸らしたまま、低い声で怠そうに言った。
「……横田って奴」
「横田? だ、れ……ソレ」
またもや、頭の中から出て来る限りの“横田”を探してみる。けれども、やっぱりそんな人物は、小学校の時の担任だった女の先生くらいしかいない。もちろん、そんな訳がないだろうに。
「……やだ」
「や、矢田?」
あたしを一瞥し、眉を顰めると、また、昇ちゃんは目を逸らした。
「……言いたくねぇ」
そっちか!
記憶に残る“矢田”らしき人物を、必死になって探していたのに。昇ちゃんは、「言いたくないから、嫌だ」と。
でも、聞きたい。昇ちゃんが、面倒臭さも気にせずに殴っちゃったような相手が、どんな人なのか。ちゃんと知りたい。
見つめていた視線を、落とす。拗ねてみせた訳じゃなく、昇ちゃんの手が目に入ったから。その大きな優しい手からは、想像出来ないと思ったから。
「ちゃんと、聞きたい」
昇ちゃんはまだ目を逸らしたまま、低い声で怠そうに言った。
「……横田って奴」
「横田? だ、れ……ソレ」
またもや、頭の中から出て来る限りの“横田”を探してみる。けれども、やっぱりそんな人物は、小学校の時の担任だった女の先生くらいしかいない。もちろん、そんな訳がないだろうに。


