脱力系彼氏

 こちらに向き直った時には、もう、昇ちゃんは恥ずかしそうな表情は全くしていなくて、いつもの顔に戻っていた。眉を顰めた、気怠そうな目の、如何にも「怠い」という顔。

乗り上げていたベッドから足を降ろし、昇ちゃんは首を擦りながら、屈んでいた背中を元に戻した。それから、声を低くして、

「……だりぃ」


やっぱりそれか!

なんて、1人心の中で突っ込むと、何だか笑けてきた。

昇ちゃんはどうやら諦めがついたらしく、溜め息を吐きながら椅子に座った。慌てて椅子のある位置に合わせて座り直す。

ふと、よく見てみると、昇ちゃんは制服を着ていた。走ってここまで来てくれたせいで、かなり乱れてはいたけど。


……待てよ。さっきは何気なくスルーしたけど、

「しょ、昇ちゃん、学校は……?!」

昇ちゃんは顔を上げて、「ああ?」と、かなり怠そうな反応をした。

「だから、終わっ」

「違う! 今、自宅謹慎中なんじゃ……」

慌てて、言葉を遮る。すると、昇ちゃんは小さく溜め息を吐いた。

「あー……、終わった」

「なんだ……良かったぁ。謹慎中なのに抜け出して来て、昇ちゃんが退学になっちゃったら、どうしようかと、思ったよ……」

ホッとして、強張っていた肩がストンと落ちる。何気なく視線を上げると、昇ちゃんは一瞬、ほんの少しだけ、口を緩めて優しく微笑んだ。

あたしは急に真っ赤になり、慌てて見てない振りをした。