昇ちゃんは優しく弧を描いていた口を、そっと開いて、溜め息を吐いた。

「アレ、姉貴」


……は?

「お姉、ちゃん?」

あたしが金魚みたいに口をパクパクさせると、昇ちゃんは、いつも通りの眠そうな顔をして、コクリと頷いた。

「いっ、いたの?! お姉ちゃん!」

「おー」

あたしはもう、馬鹿みたいに驚きを隠せないでいる。何の根拠もなく、昇ちゃんには兄弟がいないと思い込んでいたからだ。

通りで、容赦なく顔も殴るはずだ。あの台詞だって、ギリギリ納得できる。お姉さんだから、昇ちゃんは何も言い返さなかったんだ。
そりゃあ、説明するのも面倒臭いはずだ。昇ちゃんの姉だと聞いたら、あの綺麗さも凄く納得がいく。そんな事、思いもしなかった。


あたしは、恥ずかしさと可笑しさでいっぱいになった。

「じゃあ、全部、あたしの勘違いだったんだ……!」


なんだなんだ、凄く恥ずかしい!


だけど、良かった。