昇ちゃんはようやく目を逸らして、汗で濡れた髪を小さく掻いた。

「……俺、こんなだから言いたい事ちゃんと言えねぇし……安心なんか、させられる自信ねぇ」

自然と、首を横に振っていた。振らずにはいれなかった。

良かった。昇ちゃんの1番長いセリフが、幸せに塗り替えられていく。乱暴な話し方も、中身でこんなに違う。

あたしは、もう1度首を横に振った。また涙が込み上げて来ているのが分かる。

「そんな事ないよ……そんな事、ない」


ねぇ、知ってる?

あたし、今、物凄く安心してる。昇ちゃんの気持ちをちゃんと聞けて、凄く嬉しい。面倒臭いのに、不器用にもちゃんと伝えてくれた。

あたしを安心させられるのは、やっぱりあなただけなんだよ。改めて実感したんだ。

涙をゴシゴシと強引に拭う。きっと、凄くブサイクだけど、昇ちゃんの顔を見つめられずにはいられない。