脱力系彼氏

 あたしの気持ちなんか気にも止めずに、周りは変わっていく。時間は流れていく。あたしが現在、必死に目頭を押さえてるというのに、蝉達はうるさく叫んでいるし、端っこのベッドのおばあちゃんは陽気に笑っている。

世界なんて、所詮、そんなものだ。


病院内だっていうのに、思いっきり走ってる人だっている。ざわざわとうるさい廊下でも、一際響く足音。……なんて迷惑な奴だ。


なのに。

足音が止まった時、あたしはこんな無情な世界の時間が、一瞬、止まった気がした。



「……う、そ」


足音が止まったのは、この病室の入口で。


入口に立っているのは、


あんなにも会いたかった人だった。