脱力系彼氏

 冴子のナイフ捌きは、意外と、上手かった。少しデコボコながらも、リンゴの皮はちゃんと1枚に繋がっている。本当に、かなり意外だ。

笑いもようやく治まり、あたしは、大きく一息吐いた。核心を、聞きたい。


「ねぇ、冴子」

「あ? 何よ?」

状況が状況だけあって、イライラした返事が返ってくる。それでも、あたしは、引き下がれなくて、落ち着いた声で、

「昇ちゃん……、どうしてる?」

「……っ!」

慌てて冴子の方を見てみると、細い指からは血が滲み出ていた。

ナイフを置いて、切れた指を咥える。冴子は、あたしが何か言う前に、「大丈夫、大丈夫」と呟いた。
ほとんどさらけ出されたリンゴには、少しだけ毒々しい色の血が付着していた。



ねぇ。

それって、気が散ったとかじゃなくて……


動揺?