一瞬の出来事だった。何が何だか、分からなかった。物凄い勢いで車が曲がってきて、あたしは、光に満たされた。

とにかく状況を把握しなきゃいけなくて、目を開いてみたけれど、世界は意外と真っ赤で、何も見えなかった。



あ……あたし、死ぬのかな。


昇ちゃんにまだ謝ってないのにな。

「触んな」なんて言ってごめん、って。今まで付き合ってくれてありがとう、って。



ねぇ、やっぱり最後は、昇ちゃんの事しか思い浮かばないよ。

1番短い時間だったけど、昇ちゃんと過ごした時間が、あたしには1番温かくて幸せだった。

馬鹿だな。最後まで昇ちゃんの話、聞けば良かった。

さっき、手を振り解かなかったら、昇ちゃんは何か言おうとしてくれていたのかもしれない。

こんな時にさえ、期待してしまうなんて。


あたし、醜い……


もっと一緒にいたかったよ。


最後にもう1度だけ、昇ちゃんに会いたかった。