皆の注目を集めても気にせずに、女の人は恥ずかしがる様子もなく、昇ちゃんを睨み付けた。

綺麗な、大人の女性。


「あんたに、どれだけお金費やしたと思ってんのよ……っ!」

叩かれたままの顔の角度で、昇ちゃんは目線を逸らして黙っている。


ねぇ、どうして「めんどくせー」って、言わないの?


何の、話をしているの……?




ダメだ。頭の中、真っ白だ。

本能的に、身体が拒否する。
見たくない、って。



気が付いたらあたしは走っていて、どうやってここまで来たのか、さっぱり分からない。というか、さっきの場所がどこなのかも全然分からない。

相当走ったからなのか、恐怖からなのか、分からないけど、足がガクガクする。


涙が、止まらない……