昇ちゃんにとって、大事な用事? そんな事、あるの?


男の子が記念日を覚えてないのはよくある事で、あたしも多少理解はある。

だけど、「お」ってメールくれたじゃないの。

苛立ちよりも、不安が募る。

あたしをこんなにも不安にさせるのは、あなただけなんだよ?



「おい」

乱暴な声が聞こえ、あたしはびくりとして顔を上げた。

「……え?」

冴子が怪訝そうな顔であたしを見ている。……いかつい。

「食べないの? お弁当」

「あ、ああ……何かそんな気分じゃ……」

「は? 妊娠?」

「そういう意味じゃない」


妊娠なんか、する訳ない。


あたしがはぁ、と息を吐くと、冴子があたしの額にびしっとデコピンした。

「っいったぁ! 痛っ! なん……」

「溜め息吐く暇があるなら、さっさと弁当食え! 飯が腐るわ」

そんな早く腐る訳ないだろ、なんて思いながらも、そんな事を冴子相手に口に出来るはずもなく。あたしは、仕方無くお弁当の紐を解いた。

「何なの、一体。こっちまでテンション下がるんだけど」

「だって昇ちゃんが……」

「ああ、もううるさい! 早く食え」

……自分から聞いたくせに。

口を尖らせながらも、ご飯を口に運ぶ。


やっぱり味は、無い。