「まーさと、梨買ってきたの。私剥くから食べない?」
「……………食べる」
いつの間にか布団にくるまりボソッと呟くように返ってきた返答に私は笑ってしまった。
「いつまで拗ねてるの?おばさんは悪気があったわけじゃないんだから許してあげなよ」
「……別に拗ねてないよ」
「じゃあ、こっち見て?」
私はベッドの横にあった棚から果物ナイフを取り椅子に座って雅人の方へと視線を向けた。
「……今日仕事は?」
相変わらず間を置いて話す様子が子供のようで可愛かった。
「今日は昼までで終わったの。次の曲のミーティング。あ、新曲良かった?おばさんの言葉を信じるところだと良かったみたいだけど?」
「あ、うん、凄く良かった。母さんが言ったから言うけど、切なくて泣けた」
雅人は布団から出て、真っ直ぐ私を見ていつも通りにこにこしながら頷いた。
「良かった、雅人にそう言ってもらえるのが一番嬉しい」
安心した私は梨を剥いて皿の上に食べやすいように一口大に切って雅人の前に置いた。
「梨高かったんじゃない?しかもまだあるし」
「おじさんとおばさんの分と私と雅人の分」
「普通自分の分入れる?」
「私らしいでしょ?」
雅人と私は笑いながら梨を食べた。この一時が私の幸福。