「え~帰んなきゃダメなのぉ?あたしお泊まりのアリバイ作って来たのに」




ありがち。いくら野球部内ではしっかり者で姉御肌な奴でも素はこんなもん。食材の他に持って来た明らかにお泊まりセットってわかるどでかバッグ。何勘違いしてんの?



「悪りぃけど。飯だけ作って貰えればあといいから……」
「ひどい……」



ひどくねぇよ。最初からそのつもりなんだから……。どうせ自慢しまくって来たんだろ。




-ガチャッ-



「じゃーね、バイバイ」



追い払う事に成功。久々に自分の部屋でゆっくり寝たい。


「あ~ぁ………」


腕時計を見ると九時半。
背伸びを一つして家の中に戻ろうとした時だった。



-ガチャッ-



背中のほうでドアの開く音。越して来たお隣りさんだろう。誰が焼いたか分かんないけど、クッキー旨かったし顔くらい見てやろうと思った。



「あっ」



衝撃的事実。そこに立っていたのは紛れも無い………



「お前はっ!」
「?」



おでこ全開、一本結び、分厚い眼鏡……。間違いない、桜の下にいたあの女の子だった―――。