「いや――――――――――――っ!!」
「うるせぇ…」



つんざくような悲鳴。そんなに怖いのか?


「ちゃんと掴まってれば怖くねぇよ」


グイッと優の手を掴みしっかり自分の腰にしがみつかせる。



「えっ…えっ……」



泣いてるよ………。


「………ブスになるぞ~」
「…元からですから」「言い返す元気あるなら大丈夫だな」




30分位走ったか。騒がなくなったとこを見ると慣れてきたんだろう。



「着いた」


とあるビルの前。地下の駐車場にバイクを停める。


「行くぞ」
「どこですか?ここ」


優を掴まらせ、肩に手を回す。



-ウィーン…-


「いらっしゃいませ~。あら~良じゃないの~♪」



自動ドアが開き、中に入るとクネクネ身体をしならせた男性店員がいそいそ寄ってくる。


「マスター、予約してないけどいい?」
「良は先々週来たわよね?」
「俺じゃなくて彼女」
「まぁっ!」



大袈裟に驚いて優の値踏みを始めた。このオカマ、ウルサいけど腕は良い。こんなでも(一応)同姓だから余計な付き合いはしなくて済む。それに希望通りにしてくれるから結構気に入って頻繁に通ってる。



「ふーん、良にしたら珍しいタイプね。前はよく派手な子連れてたけど」
「昔はもう関係ないんだよ。今はコイツ一本なんだから」

「あら~いつか私に振り向いてくれると思ってたのに。残念」
「あ?無理っしょ。それよりさぁ、俺と同じカラー入れて。あとは任せる。うんと見栄えするように」
「……常盤さん。ここは一体」
「美容院。行きつけの」


俺らの会話を聴いてたマスターは不思議顔。

「コイツ眼鏡なくして見えてねぇんだよ。気をつけて扱って。怪我させんなよ」
「あらそうなの?はいはい。良の頼みじゃ腕によりかけちゃう☆」


優は奥に連れて行かれる。待ち時間のうちにTELするとこがある。


「さて次は………」








「良~。お待たせ☆」

実に2時間待ち。女の子の美容院はマジで長くて疲れる。