彼女が変身した事情

気付くと俺の身体を抱き締め返した細い腕がギュッとシャツを握っている。初めて行動で返された………。



「でも優は違ったんだ。キャーキャー言うでも無く、顔を赤くするでもなく……一番最初は顔を覚えたんじゃなくて匂いと抱き心地だもんな。そんな奴初めてだった……それに」




優のぎこちない感情表現に嬉しさが込み上げる。



「病気の俺をずっと看病してくれたろ?ずっと一人だったから温もりが欲しくて無意識に優のとこに行ったんだと思うけど…嫌がりもしないでいたわってくれて。超嬉しかった。あれから会ってる時も表情ないし感情ないし、本当に俺に無関心なのかと思ってたけどさ。でも逆にそれが良かったんだ。優と一緒にいると、気ぃ使わなくていいっつーか、落ち着くっつーか……こいつなら俺の中身も受け入れてくれると思った」
「…………常盤さんこそ。本当に私で良いんですか?」
「ばぁか。俺の答えは前から決まってる」


今持ってる最高の愛情で抱き締める。



「あとは優の一言が欲しい」
「なんの?」




……天然ボケか?


「俺の事どう思ってる?どうしたい?」
「……………」



ちょっと意地悪な質問。でもこのぐらいしてでも聞きたい言葉。




「…………恥ずかしくて言えません」
「はぁ?」



てめぇ、この期に及んで…。
しばしの沈黙。




「…………………………ハクシッ!」
「!!」



俺のくしゃみにビクッと反応する。



「大変。風邪ですか!?」
「寒みぃんだよ!いい加減返事聞いて風呂入りてぇ!!」




全身ずぶ濡れの身体。優を抱いてるとはいえさすがに寒い。
忘れてるかもだけど、頭も怪我してるんだっつーの。



「っ~……………………好きです。付き合って………くれますか?」




や―――――っと待ち望んでた一言。長かった。耐えた甲斐があった~。



「俺も大好き。逃げたくても絶対放さないから覚悟しとけよ?」



優の耳元で囁く。ぴくっと身体が反応してる。可愛い………。