スーッと身体から血の気が引いた。不思議な事に頭は冷静だった。静かに近付く。



「きゃーっ、常盤先輩!?何でこんなとこに?」



興奮する女ども。



「退けろ」



自分の声じゃないみたいに低い声。怒りを通り越したから俺、今冷静なんだな……。



「なんなんすか?俺らの玩具なんだからあんた関係ないっしょ?」


男三人が立ちはだかる。入学したばっかの癖に、見るからに悪そうな奴等。



「関係あんだよ」



一人の胸ぐらを掴む。



「こいつは俺のもんだ」
「はぁ?」
「俺の許婚だからな」

女達は固まり、男達は笑い出す。



「聞いた?許婚だってよ」
「女食い飽きてこんな下手物に手ぇだすなんてよ、キモ~」
「はっ。天下の常盤さんも地に落ちたもんだな」



「笑いたきゃ勝手に笑え。外見だけで判断して内面をみようとしないお前らとは違げぇんだよ。こいつがホントは外見も可愛いのだって俺だけが知ってれば良い」



「キモいんだよ!ボコボコにしてやっからよ、色男!」



胸ぐらを掴んでた手を払いのけると殴りかかってくる。


それをかわすと、まずボディに一発。すかさず後頭部に蹴りを一発。
悪いけど、喧嘩は弱い方じゃないんでね。
とはいえ、三人相手はちょっときついかな。



-ガッ!……-



相手の拳が右頬に決まる。喧嘩慣れしてるのか、全部の指にゴツい指輪……。



「チッ……」


-口ん中切れたな-



ペッと血を吐く。




「ちょっとぉ!止めてよ。うちら奈月ばやってって言ったけど、常盤先輩になんで手出すのよ!」
「うるせぇ!すっこんでろ!!」


仲間割れか、おい。
怒鳴りつけられてすっかりビビってる。
頼む相手間違えたの今ごろ気付くなっつーの。



「そうだよな。コイツが元は悪いんだったよね~」



視界の隅に入った、最初に倒した奴が持ってるのはモップ。まさか………。


振りかぶった先には…優!



「優!!」



守らなきゃ!身体が反応した。後頭部に走る鈍い痛み。