「悪いんだけど…」



するっと腕を離す。期待持たす様な事言ってもしょうがない。



「好きでもない娘とは付き合えないからって真崎にも言った筈だけど?」
「え?」



表情が固まる。



「初めて本気で付き合いたいと思った娘できたんだ。その娘に誠意見せる為にも誤解される様な事したくないし」



みるみる目に涙が浮かぶ。その娘の前で携帯を取り出す。かけた先はもちろん真崎。



「お前今から速攻でうちのマンションに来い。すぐにだ、一秒でも早く来い」




それだけ言うと返事も聞かずに電話を切る。


「と言う訳だからごめん、帰って。迎え呼んだから」



シクシク泣き出したその娘。でもフォローはしないし、抱いて慰める事もしない。
ただ義理で真崎が来るまで隣りに居るだけ。




15分後、慌ててやって来た真崎を一殴り。好きな娘に疑われたくない、こんな迷惑な事はするなと一喝。そして一向に泣きやまない娘を無理やり連れて帰らせた。
これで真崎が本命彼女と別れる事になっても知ったこっちゃあない。





-パタン……-



「はぁっ………」




どっと疲れる。何でこんな目に会わなきゃなんないんだ!?真崎のやつが変に気を持たすような事いうから…。
でも結局は………今までの俺のやり方が間違ってたって事なんだろうな。当然の報いってやつ?今まで付き合いがあった女達と全て手を切るって事はこれからも当然こういう事はあるだろうし、俺自身何らかの形で制裁を受ける事もあるだろう。
でも他の誰にも目をくれない。アイツだけを好きでいる自身はある。



ふと優の顔が頭に浮かんだ。会いたい。無性に声が聞きたい……。


部屋の中に入る。暗闇に入り込む明り。向かいの部屋明かりだ……。



-カラッ……-



ベランダに出る。
優の部屋はカーテンが開いていて机に向かう優の姿が見える。目が悪いからこっちに気付いていない。


手摺にもたれて優を眺める。



夜風も少し暖かくなって来た。もうすぐGW。過ぎれば夏もすぐそこ-……。