常磐良介(ときわりょうすけ)高校二年。今日は始業式&入学式の日――――。


「常磐~♪今日どっか遊び行こうよ☆」
「あ~……今日ムリ」

「あ、常磐だ♪この前の約束忘れてないよねぇ?」
「忘れてねぇよ…………なんだっけ?」
「も~。デートしてくれるって言ったじゃん」
「だっけ?」



教室にいても廊下を歩いても、絶えず女の子に声を掛けられる。それもこれもこの容姿のせい。180cmの長身。細身の八頭身。アッシュ系に染めた髪。着崩した制服…まぁ自他ともに認めるイケメン。
でも最近それがウザくて仕方ない。街を歩いても逆ナン、学校内では告りラッシュ…皆外見目当てだろーが。俺の中身なんかどうでもいいのかよ。

だから女遊びなんか適当。
最近じゃ遊んだ女もろくに覚えちゃいない――……。



「おぅ、良介ー。これから遊び行かね?」



クラスメイトの真崎。よくつるんで遊んでいるグループの一人。こいつ、かなりの女好きで今はこずかいくれるってOLの彼女がいるらしい。でも本命はお嬢さん女学院の二年だって。要は二股。
ったく女なんかどれも一緒。夢中になる方がどうかしてる。



「おごりだろ?」
「もち♪今俺リッチだから☆」



鞄を掴む。


「え~常磐帰っちゃうの~?」
「たりぃから帰る。じゃね」



群がる女共に適当に愛想振りまいてヒラヒラ手を振り教室を出る。
マジやってらんねぇ。


「どこ行く?」
「カズ達呼んでカラオケは?」
「アイツらつかまんの?」
「わかんねぇ」



そんな会話をしながら歩いてると、親同伴でやって来る真新しい制服を纏った一年生とすれ違う。そういえばこれから入学式だっけ。まっ、関係ないけど。


校庭では野球部が練習している。汗泥まみれでごくろうさん。そりゃ俺も中学まではサッカーしてた。才能もそこそこあったから、妬んだ先輩から事故に見せかけての嫌がらせ。右足首を複雑骨折。サッカーは続けられなくなった。そん時は恨んだけど、今は何とも思ってない。所詮人間なんかそんなもん。信用しちゃいけないんだ……。