「うわ~…なんて雨なの!?」
今時期珍しいくらいの大雨。委員の仕事で遅くなった私にこの仕打ち…なんなのよ一体………
「朝晴れてたのになぁ。傘ないや……」
薄暗い空を見上げてため息を付く。通り雨じゃなさそうだし、待ってても止まないだろうなぁ……
「仕方ない。走るか」
学校から家までは歩きで40分位。猛スピードでダッシュすれば、私の足でなら…30分くらい(あまり変わり無し)?
「よし……」
気合いを入れて、雨の中一歩踏み出した時だった。
グイッ
「え…?」
腕を掴まれ歩みが止まる。何事かと振り向いた先にいたのは………
「小池君?」
相変わらずの真顔で、私の腕を。なんで?
「おーヒナタ、どした?」
後ろから、ひょっこり顔を出したのは、いつも小池君の周りにいるお友達の木村君。
「あれっ、成宮じゃん。どしたの?」
にかっと笑った口元に八重歯が光る。
可愛くて気さくで人懐っこい彼は、女子に人気があるんだ。
「成宮傘ないの?」
「うん。降ってくると思わなかったからさ。気合い入れて走ろうかと思ってた~(苦笑っ)」
「だよな~。俺もっ。ヒナタの置き傘あったから……あっ、そっか!」
木村君、なんだかパッと顔が明るくなった。何で?憂鬱な雨降りだよ?
「あ~!ヒナタごめんっ!俺、全っ然逆方向に用事思い出した!悪りぃけど、先帰えんね!」
「えっ、木村君!?」
止める間もなく、雨の中ヒラヒラ手を振りながら掛けていく。
しばし呆然と、その後ろ姿を眺めてたんだけど……
「あ……」
気付くと、小池君と二人きり。もちろん会話はない。
「あ~……じゃあ私も帰るね」
見上げてとりあえずニコッと笑う。
さぁ行こうという時…そういえば掴まれたままだった。