コンコン…




「失礼しま~す」




開けると誰もいない保健室。保健医の先生は出張中。よって、保健委員が当番制で留守を守ることになってる。




「さて」




日誌を書きながら、何気なく外を見ると……



「あれ……」




窓から見える中庭。そこの木に寄り掛かって、空を見上げながら目をつぶる見覚えある男子生徒。



「小池君?」




同じクラスの男子。接点なくて話したことはない。
顔はいいのに、無口で無表情だと女子の間ではあまり評判よくない人だけど………様子がおかしい。



「ちょっと…怪我してんじゃない!」



腕には赤黒い広範囲の傷。ここからじゃ横顔しか見えないけど、辛そう時折顔を歪める。





ガラッ!




「小池君!」





考える間もなく、窓を勢いよく開いて叫んだ。そんなに距離はないから聞こえるはず。




ゆっくり顔をこちらに向ける。
ドキッとした。
だって見えなかった方の顔半分、血だらけ。なんで!?




「こっち来て!」




とてもじゃないけど、放って置けないよ。




ガラス戸を開いて駆け寄る。




「ちょっと…どうしたのこれ!」

「………」



慌てる私とは裏腹に、顔色を変えない。みんなが無口だって言うの本当だったんだ……じゃなかった。




「来て!手当てさせて」



グイッと引っ張るけど、動こうとしない。
治療させない気?



見上げると、ふと目が合った。




でも、痛々しい傷と、顔から流れる血で片目開けてられないじゃん…




なんだか私まで辛くなってきた。喉の奥がつんとする。
その拍子に自分の瞳が潤んだのがわかった。



あ………




ほんの一瞬だけ、眉が動いたのがわかった。何?動揺したの?


その時、頑なだった彼の身体の力がふっと抜けた。保健室に向かって一歩踏み出す。




ヨロッ……