丸椅子をズーッと引きずって、これ以上寄れないくらいヒナタの側まで詰め寄る。




「一体私がヒナタのどこを好きになったと思ってるの?
顔?ルックス?そんなのはっきり言ってどうでもいいのよ。一緒に居てつまるつまんないの問題じゃないの。
私はヒナタじゃなきゃ付き合ってない」



一気にまくし立てた。語尾が震える。
思ってる事を口にするのはこんなに難しいんだ。言葉が足りないことに苛立ちを覚える。
こんなに好きなのに、私の気持ちをわかってくれてなかったのが思った以上に堪えてるんだ。
ちゃんと理解したうえで付き合ってることを分かってほしい。

それともうひとつ………




「ヒナタこそなんで私と付き合ってるの?」

「………」

一度だって好きって言ってくれてないから不安になる。触れるって言ったって、手を握るとか腕を組む程度で、その……キスとかそういう甘~い雰囲気になんてなったことない。
ほんとに私ヒナタに好かれてるの?



「なんであの時付き合うって言ってくれたの?本当に私の事好き?…わかんないよ」



この事に関してだけはヒナタの感情が読めない。だから尚更不安が募る。

いつまでも無言なヒナタに、我慢も限界。堪えてたものが急に吹っ切れた。ブワッと溢れる涙……




ガタン!




「……んもっ、いいよっ!」



勢いよく椅子から立ち上がった。そのままヒナタを置いて保健室を出て行こうとした。



「待って」



またも手首を掴まれて動きを制される。

「何っ?」


「好きだったから」

「…!?」



ビックリして動きが止まる。今なんて?


「ずっと好きだったから……あの雨の日よりもずっと前から。だからあの時、好きって言ってくれたの…チャンスだと思った」

「……~っ。なんでそれを言ってくれないの!?女の子はねぇ、何がなくても愛情だけは言葉にして聞かせてほしいものなの!」

「……ごめん」