どうしてやろうかしらと思ってヒナタを見上げると、なんかどうでもよさ気にそっぽ向いてる。


「ん~……じゃこれからヒナタに手を出さないでください」

「だとよ。守らなかったらわかってるよな?」


「わ、わかったよ」

バタバタ逃げて行く背中を見送りながら、もうため息つくしかなかった。


「せっかくのデートが台なしだぁ」

「……悪かった」


いつの間にかヒナタがこっちを向いていた。
やだ、そういうつもりで言ったんじゃないのに。


「違うの。ヒナタが悪い訳じゃないよ」

「………」


「まぁまぁ…今日は俺が許すから今から行ってこい」

「お兄ちゃんいいの?」

「特別な。婆ちゃんには言っといてやるよ」

「やった♪ヒナタは?時間ある?」


コクリと頷くのを見ると、もう嬉くてヒナタの腕に飛びついた。


「あ~…あんまりベタつかないように」

コホンと咳ばらいするお兄ちゃん。それを見たヒナタは、珍しく頭を下げた。

「お借りします」


ビックリした…普段のヒナタからは想像もつかないようなことを……いや、別に普段がふてぶてしい訳でも傲慢な訳でもないんだけどっ。
それでもこんなに謙虚なヒナタ初めて見たから。


「あ~……まぁ妹のこと、頼むわ」


お兄ちゃんもヒナタの独り歩きしてる悪い噂は聞いてたらしい。
最初は誤解してて、付き合ってるって言ったら反対してたけど、実際自分の目で見て、確かめて。それで認めてくれたのかな♪


「よし、行こっか♪」

ヒナタったら別れ際に、律儀にお兄ちゃんに頭下げちゃって♪


「あ~ぁ、私もお腹すいちゃった~」

「………」

「な~んかお腹いっぱい食べたいね」

「ん……」


ヒナタと腕を組ながらゆっくり歩き出す。
見上げると、横顔に汚れ発見。


「ちょっと屈んで?」


素直に身を屈める。顔に手を延ばす。汚れを落としながら、ヒナタに触れている時間がなんとも幸せだった―――