スッとヒナタの顔が近づいてくる。
「合図したら走れ」
言うが早いか、振り向き座間に後ろにいた一人に蹴りを入れた。
「ぐは…っ!?」
「あっ、おいこのっ!」
不意をつかれた一人が倒れ、他の四人の視線が一斉にヒナタに向いた。
「行け!」
殴り掛かる三年生を交わしながら私の背中を押す。
「嫌よっ!」
でも私は逃げなかった。
「この際だ、女でもいい!」
ヒナタにやられっぱなしなのが余程悔しいのか、怒りの矛先が私にむいた。
すでに三人相手にしてるヒナタは私の元に来ることは出来ない。
「成宮!」
ヒナタの叫ぶ声と、拳が振りかざされるのは同時だったように思う。
バシッ……ドサッ!
一瞬周りが静まり返る。巻き添えくわないように遠巻きで様子見てる生徒たち。
でも………
その場に倒れていたのは私じゃなかった。
ヒナタを始め、他の三人も手を止めて呆然。
理由は二つ。私が全然怯まなかったことと、今私の前に立ってる人物。
「な、リョウ!?」
リョウと呼ばれた男子生徒。
この学校で多分知らない人はいないと思う。空手の大会は毎回上位入賞する有名人。何回も壮行会してるし。
背格好こそヒナタと変わらないけど、温厚な顔立ちがあからさまに不機嫌になってる。
「お前ら下級生相手になにやってんの?」
「いや…俺らちょっと生意気な下級生しめるの手伝えって言われてさ…」
「へぇ…で?」
「で?って……先にそいつが仕掛けてきたんだぜ」
「ふーん…そうなの?」
私の方を振り向く。
「ヒナタは私を逃がそうとしてくれたの!」
「…こう言ってるけど?」
「なっ…リュウは俺らとその女どっち信じるんだよ。俺達クラスメートじゃん?」
汚い!クラスメートって言えばいいと思ってるわけ!?


