若干不機嫌になった私を見て、慌ててフォローする。




そう。恐くなんかない。現に、ヒナタの周りには男子達が集まるし、こう見えて、子供には人気あるんだから。



「ヒナタ、保健室」
「………」




いったん振り向いたけど、ふいっと私から視線を逸らした。

あ、行かない気だ。


喋らなくても、ヒナタの仕種なんかを見てればなんとな~くわかる。



私達間では、あまり言葉がなくてもコミュニケーションは取れているみたい。



「ダメだよ。消毒して絆創膏くらい貼ろ」


ぐいぐい腕を引っ張ってもびくともしない。
私より全然大きなヒナタを見上げる。


口はついきついこと言っちゃうけど、実は凄いヒナタが心配。喧嘩もしょっちゅうだから、生傷絶えなくて。

でも、自分事で喧嘩してるんじゃなくて、こんなだから喧嘩慣れしてるだの、めちゃ強いだの、噂に尾鰭が付いていつも巻き込まれてるの知ってるもん。
だからいずれ大きな怪我して来るんじゃないかって、内心気が気じゃない。




あ、目が合った。

私の見上げる瞳が潤んでるのに気付いたみたい。
一瞬、ほんの一瞬だけ眉が動いた。


すっと友達の輪から離れて、廊下に出る。保健室、行く気になってくれたみたい。
慌てて後について歩く。





ヒナタの広い背中。
歩く度に揺れるサラサラの黒髪。

ふわっと鼻をくすぐる香水の香り。


付き合い始め頃にプレゼントしたもの。使って貰えないのを覚悟して渡したんだけど、初めてのデートにつけて来てくれた時は嬉しかったなぁ。





そういえば、初めてヒナタを意識し出したのも保健室だったっけ―――――――