「ごめんね、おばあちゃんはしゃいじゃって」
半ば強引にご飯ご馳走しちゃって、外はすっかり暗くなっていた。
雨も上がり、駅まで送ろうと、只今自転車の二人乗りの真っ最中。
ありえない展開にドキドキしながらも、前を見据えて自転車を漕ぐ小池君の耳元に顔を寄せる。
「おばあちゃん…助けてくれてありがと」
「いや……」
そっけない返事。
でも、この人の優しさを既に知ってるからかな、全然ありだよって思えちゃう。
キッ!
「わっ!」
学校の前。
急なブレーキに立ち乗りしてた私は、思わず前のめりになる。
「あ……」
咄嗟に、ギュッとつかまった小池君の首。
洗ったばかりのシャツの匂いと、サラっとした髪の感触。細身なのに、私の体を支えるしっかりした肩幅。
ドキン………
今ここだけが、時間を止めたように思えた。
その中で、心臓の音だけは、うるさいくらいに分かる。
「サンキュ。もうここで………」
背中に響いてくる小池君の声………。
やだ。
離れたくないよ。もう少しこのままで………
ギュッ
大胆にも首に回した腕に力を加えて、離れたくない意志を示す。
「成…宮?」
「好き…」
言ってしまった。これで拒否られたらこんな関係は二度と望めないのに………。
でも…それでも…
もう後には引けなかった。
「好きだったの。小池君、あんまり喋らない人だから、皆誤解してるけど……表情見てればちゃんと分かるって気付いてからは…ずっと見てたの!今日のことも含めて、本当は優しい人だって分かったら……もう我慢できないよ」
声が震える。
きゅって腕に力を入れる。じゃないと腕まで震えてしまいそうだから。
そっ
腕に乗せられた大きな手の平。それが、ポンポンと優しく叩いてくれてる。


