彼はクールフェイス☆




「ごめんね、おばあちゃんはしゃいじゃって」




半ば強引にご飯ご馳走しちゃって、外はすっかり暗くなっていた。

雨も上がり、駅まで送ろうと、只今自転車の二人乗りの真っ最中。

ありえない展開にドキドキしながらも、前を見据えて自転車を漕ぐ小池君の耳元に顔を寄せる。




「おばあちゃん…助けてくれてありがと」

「いや……」




そっけない返事。
でも、この人の優しさを既に知ってるからかな、全然ありだよって思えちゃう。





キッ!




「わっ!」



学校の前。
急なブレーキに立ち乗りしてた私は、思わず前のめりになる。




「あ……」





咄嗟に、ギュッとつかまった小池君の首。
洗ったばかりのシャツの匂いと、サラっとした髪の感触。細身なのに、私の体を支えるしっかりした肩幅。




ドキン………





今ここだけが、時間を止めたように思えた。


その中で、心臓の音だけは、うるさいくらいに分かる。




「サンキュ。もうここで………」





背中に響いてくる小池君の声………。

やだ。

離れたくないよ。もう少しこのままで………




ギュッ




大胆にも首に回した腕に力を加えて、離れたくない意志を示す。




「成…宮?」

「好き…」




言ってしまった。これで拒否られたらこんな関係は二度と望めないのに………。


でも…それでも…



もう後には引けなかった。




「好きだったの。小池君、あんまり喋らない人だから、皆誤解してるけど……表情見てればちゃんと分かるって気付いてからは…ずっと見てたの!今日のことも含めて、本当は優しい人だって分かったら……もう我慢できないよ」



声が震える。
きゅって腕に力を入れる。じゃないと腕まで震えてしまいそうだから。



そっ



腕に乗せられた大きな手の平。それが、ポンポンと優しく叩いてくれてる。