ガラッ





「おはよ…って、やだちょっと……また喧嘩!?も~!ヒナタったら」

「………」





制服のシャツが、泥だらけなうえにあちこちに血がついてる。
せっかく顔がいいのに、あ~ぁ…唇の脇が赤黒く腫れてるよ。



でも私がどんなに小言を言っても顔色一つ変えないで真顔のままなこいつ。小池日向(こいけひなた)は私の彼氏。同級生で同じクラスなんだけど………






私、成宮ミュウはどこにでもいるごく普通の高校生。
勉強もスポーツも普通。
普通に高校通って、普通に生活して、普通に毎日が過ぎて行く…………


そんな私に、唯一普通じゃないのが、ヒナタと付き合ってること――――――






周りいわく、今だに私がヒナタと付き合ってるのが不思議なくらい、私たちにはあまり会話がない。

私的には、多弁なヒナタはなんだかキモいと思うし、何よりヒナタのこと好きだから付き合ってるんだもん。


でも……


あいつが私の事、どう思ってるかがわかんない。





顔には絶対出ないし、無口だし……愛情を口にだして言われた事って無いんだよね。





「とにかく、体育着着ときなよ」




ヒナタのロッカーからポロシャツを出して放り投げる。




「今日もかいがいしいね」



近くで私達のやり取りを眺めてた友達達。



「だって放って置けないもん」




「まったく…小池君と付き合えるの、ミュウだけだよ」

「そうだよ。でもよく付き合ってられるよね。恐くないの?しょっちゅう喧嘩して、無口だし……私はもっと優しい人が好きだけど」



「それはひとそれぞれでしょ」




素直に受け取ったポロシャツに着替えたヒナタから、シャツを受け取ると、綺麗に畳んで袋に納める。



「別にヒナタは恐くないし、ちょっと口数少ないだけで悪い奴じゃないもん」


「ご、ごめん。そうだよね」