メイドにメイクと髪の毛を整えてもらい、リビングに行くと、ちょうど話し声が聞こえて来た。

「姫佳さん!」

姫佳に気付いた男性が、姫佳に駆け寄る。

「よく似合っていますよ」

男性はニコニコと上機嫌だ。

姫佳は苦笑している。

「ありがとうございます」

「では、参りましょうか。久しぶりに本家の方々にお会いできますよ」

姫佳は軽く頷く。

(本当は、あなたが会いたいだけでしょう?あの娘に)

姫佳はズキンズキンと頭の奥で、痛みを感じていた。

車は滑るように、大きな屋敷に到着した。

「姫佳、元気そうだね」

久々に会った、伯父であり、本家の当主。

姫佳は軽く頭を下げた。

「先日は多大な御祝い、ありがとうございます」

当主はクスクスと笑う。

「いや、あれくらいはね。邑理(おうり)くんとの生活はどうだい?」

「何不自由なく、過ごさせて頂いています」

姫佳は心の中で、鳥かごの中にいるようなものだけど、と呟く。