また、雨が降っている。

窓の外側には、ポツポツと滴が当たる。

彼女は滴を指でなぞった。

「……雨、か」

彼女はボンヤリと窓の外を眺めている。どんよりと重い灰色の雲が、彼女の心を更に重くしていた。

「姫佳(ひめか)さま、そろそろ旦那様がお帰りになるお時間です。本日は……」

側にいる執事が淡々とスケジュールを口にしている。

「面倒」

彼女、姫佳は溜め息混じりに言葉を呟く。

「確かに、姫佳さまには面倒な事かもしれません。ですが、旦那様のお役に立てる事のおひとつかと思います」

執事の言葉に、姫佳はしぶしぶ腰を上げた。