「吉岡先生!」 卒業式、私の名前を呼ぶ生徒の声がした。 もう、この声を聞くこともないんだなぁ... そう思うとすこしだけ寂しい気持ちになった。 「卒業おめでとう」 「おぅ、ありがとな」 フフ。 顔が赤く染まってて、まるで林檎みたい。 「留も卒業かぁ... 何か、急に静かになっちゃうね」 「俺がいなくなって、寂しい?」 「うん。寂しい」 私がそう言うと、留は制服の第二ボタンを取って私の手のひらにそっと乗せた。