『え? お礼?なんの?』
『……えっと、勉強教えてくれたお礼に、私が作ったんだけど……その、もしいらなかったら捨てて』
自分が作ったものを誰かにあげた経験なんてなかった。
奈央はその瞬間、紗矢子が笑って受け取ってくれたのを今でも覚えている。
『すごい! 奈央が作ったの!? 嬉しい、ありがとう! 大切にする!』
今思えば、自分が作ったものを人に喜んでもらう楽しさを知ったのはこの時だったかもしれない。
『そうか……だから私はこの道を……』
奈央はそっと手のひらに載せられた猫のマスコットを愛おしいそうに撫でた。
ふと浮かんだ懐かしい思い出に奈央の顔が緩む。
「それ、紗矢子に返してやって欲しいんです」
「……え?」
「その日がいつになるかわかりませんが、私からのお願いです」
斎賀はもう一度軽く頭を下げて奈央に笑いかけた。
そのマスコットを返すということは、いつの日にか紗矢子と再び会うということだ。
そう思うと瞼が熱くなり、自然と涙が溢れてきた。
それをこぼれ落ちないように指先でそっと拭う。
「はい、必ず……」
「よかった。長居してすみません、それでは失礼します」
斎賀が踵を返そうとした時、奈央が声をかけるよりも前に一条が口を開いていた。
「待てよ」
『……えっと、勉強教えてくれたお礼に、私が作ったんだけど……その、もしいらなかったら捨てて』
自分が作ったものを誰かにあげた経験なんてなかった。
奈央はその瞬間、紗矢子が笑って受け取ってくれたのを今でも覚えている。
『すごい! 奈央が作ったの!? 嬉しい、ありがとう! 大切にする!』
今思えば、自分が作ったものを人に喜んでもらう楽しさを知ったのはこの時だったかもしれない。
『そうか……だから私はこの道を……』
奈央はそっと手のひらに載せられた猫のマスコットを愛おしいそうに撫でた。
ふと浮かんだ懐かしい思い出に奈央の顔が緩む。
「それ、紗矢子に返してやって欲しいんです」
「……え?」
「その日がいつになるかわかりませんが、私からのお願いです」
斎賀はもう一度軽く頭を下げて奈央に笑いかけた。
そのマスコットを返すということは、いつの日にか紗矢子と再び会うということだ。
そう思うと瞼が熱くなり、自然と涙が溢れてきた。
それをこぼれ落ちないように指先でそっと拭う。
「はい、必ず……」
「よかった。長居してすみません、それでは失礼します」
斎賀が踵を返そうとした時、奈央が声をかけるよりも前に一条が口を開いていた。
「待てよ」