するとしばらくして、龍馬の足音が聞こえた。
まだ泣き止まず、あやし続ける重太郎は龍馬にお灸をすえてやろうと襖が開くのを待つ。
そして、襖が開かれる。
「龍馬…!!おまん武智にどがぁこつしゆう!?」
そう、言いながら龍馬の方へ視線を向けると、後ろには見知らぬ女が。
「重太郎…どがぁした??」
重太郎は、美夜がここまで泣く理由が分かった。
今までは二人が喧嘩して、とかだったが今回はどうやら違うようだ。
女が絡んできたのは初めてで。
それにすら気づかずノコノコと女を連れて入ってくる龍馬に、重太郎も些か腹がたった。
「誰じゃ」
腹がたっているせいか、言葉には若干怒りがまじっている。
しかし、まだ泣く美夜の背中を撫でる手は止まらない。
「重太郎…忘れたかえ??加尾やき」
「!?」
「あら、重太郎様だったのね…お久しぶりでございます」
柔らかく微笑む顔には、確かに面影がある。
しかし、加尾と分かった事で、さらに重太郎の怒りは沸点に近づく。
「美夜ちゃん、どがぁした??」
泣いている美夜に今頃気がつく。
近寄る龍馬を、重太郎はサッと避けた。
「ほたえな…おまんが武智の名前ば呼ぶ資格はなか!!!!!」
珍しく怒りをあらわにする重太郎に、龍馬は驚く。
そう言って、重太郎は美夜を抱えたまま立ち上がって足早にその場を後にした。



