それから、数十分。


美夜は泣きつづけた。


何が美夜を泣かせているのかもわからないまま。


龍馬と重太郎の優しさに、甘えた。


「…ありがと」


「…いいき。美夜ちゃん、どうするがか??」


美夜は、龍馬にひざ枕させてもらっていた。


ただ、美夜にとっては人の温もりを感じるのは久しぶりだった。


「重太郎と、話あったき。美夜ちゃんの返事次第ちゃ。どうじゃ、わしと国ば変えんか??」


正式に、龍馬から攘夷運動に誘われた。


「私は」


美夜は、視線をあげて龍馬にやる。龍馬は、ただ黙って美夜の言葉を聞いた。


「自分さえよければって考えてるし」


「えいよ」


「戦力になれないかもしれない」


「咎めはせんちゃ」


「女だしチビだし」


「知っちゅう」


「やっぱり…私みたいなのが…」


その美夜の言葉だけに、龍馬は相槌をうたなかった。


ただ、美夜の髪を優しく撫でた。


美夜の髪は龍馬の指に絡むことなくするりと通り抜ける。


「私なんかが、龍馬と…」


じわりと涙がまた。


あかぎれた目元を涙がつたう。


「美夜ちゃんはこじゃんと泣き虫さんやけぇ。」


龍馬は小ばかにし、口元を緩ませる。


「うるさい…」


手で涙を拭う美夜。


それでも溢れる涙に今度は龍馬が涙を拭う。


美夜は、大きくて優しくて温かい龍馬の手に、また涙を流した。