「龍馬…ひ、左手…」

美夜もだんだんと精神が安定してくるが、やはりまだ出続ける血を心配した。

龍馬は、美夜の頭を撫でてやる事も出来ず、優しく微笑むだけだった。


1月だというのに美夜はあいにく薄い浴衣一枚と、なんとも寒そうな格好だった。

龍馬は、血だらけの両手が美夜につかないように、優しく抱きしめた。


やっぱり、美夜の体は小刻みに震えていた。

きっと、寒さや恐怖や不安からだろう。

美夜は、抱きしめられた龍馬の肩越しで辺りを見回すと、どうやら逃げ込んだのは材木屋のようだった。


そして、震える唇と舌を懸命に動かした。

「…桂さん…は??」


そう聞くと、

龍馬も重たそうに唇を開く。


「薩摩に援護頼むちゅーて旅人のフリばして行っちゅう」

感情にがんじがらめになる美夜の頭と心はもうついていけず。


視界がぼやけたのと。

重太郎、桂、西郷の声を聞く前に重たい瞼を閉ざしてしまった。