「龍馬!!」

新撰組と刃を交わしていた桂が、龍馬の名前を強く叫ぶ。


「ああ!!」

そう言うと、龍馬は引き金を引いた。


ドゥンドゥン!!!!!

沖田と土方の刀は、銃弾によって弾かれたのだ。

その隙に桂と龍馬、美夜は部屋を強引に出ていった。


「それと!!おまんら幕府の犬はちゃんと先見据えぃ!!これから潰れんは貴様(きさん)らじゃァ!!!」

男達の怒号の声の中、掻き消されないように龍馬が声を張る。

「黙りなァ^^」


いつのまにか沖田は周りこんでいた。

沖田の目が薄く開かれていた。

その瞬間、龍馬の指先には理解しがたい痛みが走る。


それと共に、高杉晋作から貰った拳銃が中に舞った。

「龍馬ァァァァ!!」

「くっ…!!」


赤い血飛沫が飛び散る。

その根源を片手で握り締めるがじわりと赤い血は滲み出てきてしまう。


「西郷は…??」

「援護のモンら連れて来るち言うとった」

「龍馬…大丈夫!?龍馬!!」



意識も錯乱して来た美夜を見て、龍馬は親指をおさえるのを止めてあやすようにして美夜を抱え上げた。

その後も、美夜は狂ったように龍馬の名前を呼んでいた。


「チッ…逃がしたか」

土方が、苦虫をかみつぶしたような表情で舌打ちをついた。

「それにしても…あのお龍って子、斬っていたらどうすんだィ??近藤サンが煩いだろ^^」


そう、沖田が近藤の名前を出した時。

土方の瞳は微かに揺らいだ。


が、沖田は気づかない。

土方に、背を向けていたから。

「大丈夫だ、アイツも攘夷の肩入れしてンだから近藤サンも踏ん切りつくだろ…」


土方はさらに眉間にシワを寄せて雑に頭をかく。

沖田はゆっくり歩いて、曇り一つ無い星が輝く空があった。

何よりも輝く月は、まるで孤独のようだった。

そして沖田は、目をさらにさらに細くさせた。


「いつになったら近藤サンは帰ってくるんだろうねェ^^…俺が生きてる間に、会えるだろうかァ^^」

「やめろ!!」


沖田の呟きは、土方の怒号によって掻き消された。

沖田は、何もしないでただ空を見ていた。


土方はため息をついた後、踵を返してその場を立ち去った。

「…俺は後、どれくらい生きれるんだろうねェ^^」


いつも貼付けられた笑みは今日だけは悲しげに歪んだ笑顔になる。

沖田の呟きは、輝かしい暗闇の夜空に溶け込んでいく。


そんな夜空が、沖田には近く感じた。

冬の空気によって冷やされた沖田の頬に熱い涙が伝った。


涙は、重力に負けて畳みにシミを作った。

沖田は声を殺して、しゃがみこんだ。


畳みには、いくつも大きいシミができた。