あの日以来― 拓也とは何もないままだった。 マスターの店で会うこともなかった。 あたしは亮二とつき合うことになり、そんな出来事すら忘れていたのに。 真面目な拓也は悩んでいたんだ。 ものすごくショック。 仕事が終わってから、亮二に電話を入れた。 「おっ。樹里。オレも電話しようと思ってた」 「どうして?」 「定時で帰れるから、一緒に帰ろうかと思って」 こんな日に限って定時だなんて。