「ん、ありがとう」
「気をつけろよー? 帰りもなんなら迎えに来てやるから」
「平気!」
マスクを着けて、コートの裾に手を埋めてドアを閉める。
「あ、陽菜」
「ん?」
閉めかけていたドアをもう一度開けてなる君と目を合わせる。
「手、寒いなら貸す」
ん、と言って渡された少し大きい黒の温かそうな手袋。
「ありがとう…まだ秋なのに寒いね」
「病み上がりだからだろ」
微笑んだなる君は「じゃーな」と手をふる。
「うん、なる君も勉強頑張ってね」
「おう」
なる君と別れてから借りた手袋を付けた。
「あったかー…」