ここははるか昔の日本、
平安の世である。
多くの人々は
占いや迷信を深く信じ
神を恐れていた。
またその思いと
世の中に溢れていた怨念が
形を成して
妖怪、獣、怪物と
様々なものを生み出していた。
そして負の因縁は
深まる一方であった。

そんななか、
ある貴族の屋敷で、ある者が産声をあげこの世に生を受けた。
しかし、この者は生まれた瞬間この者の母親に悲鳴をあげさせた。
「いやあああああああああああ―…!!!このような者妾の子ではない!!!妾の子をかえせえええええええええええ!!!」
母親は泣き叫び暴れ出した。
仕えの者達が必死に抑えようとしたが、狂ってしまった母親を止めるすべはなかった。
騒ぎを聞きつけたこの屋敷の主人であり、母親の夫にあたり、生まれたばかりの赤子の父親が現れた。
「何事じゃ!!!この荒れようはなんじゃ!!!わしの子はどこじゃ!!!早よ見せぬか!!!」
荒れ狂う母親の頬を叩き、荒々しく怒鳴りつけ終いには母親の顔を踏みつけながら父親は言った。

おずおずと仕えの者が赤子を差し出した。


「何じゃこれは…。」

赤子の姿を覗いた瞬間、先ほどまでの荒々しさが嘘のように血の気の消えた真っ青な顔でつぶやいた。


赤子は女であった。
赤子は赤子と言えないほど白く、まるで透けてしまいそうな肌に生まれたばかりだったというのに艶やくほどの黒髪、唇はぷっくりと薄ピンク色。そしてなにして何よりも瞳の色が奇妙な色をしていた。

彼女の瞳の色は