転校先は鹿児島だそうだ。

それは小学生には実感ができない



それほど



あまりに



遠い距離。



ただ、もう会えない。
ということだけは容易に想像ができた。



休み時間に藤富千夏のまわりに女子が集まっていた。



「ちなちゃんケータイは持ってない?」

「手紙書くね」

「元気でね」

「ぜったい遊びに行くから」

「これに名前と住所書いて」

「わたしも」

「プリ交換しよ」

「今度一緒に撮りに行こうね」

たくさんの言葉に囲まれて、藤富千夏は笑っていた。




でも、その笑顔は、ぼくの心臓をぎゅっと締め付けた。



ぼくは声をかけることはできなかった。




そういえば今日は



「おはよう」



も交わしていないや。




それからの二カ月は時間が飛ぶように流れて行った。
とくにこれといった事件もなく。


ぼくと藤富千夏の関係もなんの変化もなかった。

ぼくも自分の気持ちを伝える気はなかった。

伝えたところで辛いだけだ。




あっという間に夏休みにはいって



藤富千夏は鹿児島へ引っ越していった。



ぼくの初恋は





終わった。