「せっかく持ってきたのになぁ…」


そう、ぼやく彼。


「そうや!!!」


彼は、いつも笑顔な顔をさらに笑顔にさせて、急にこっちを向く。


バサッ!!!


そう、音が聞こえたと思うと、視界が急に暗くなる。


そこでようやく彼が傘を開いた事に気付く。


「キャァッ!!??」


体の重力が変になったかと思うと、彼に抱き留められていた。


もうすっかり止んだ雨。


なのに、夕日に照らされうつるは、互いの想いを言えないままの相合い傘をする二人。


二人の影は長く長く伸びていた。