「え、えっと……『青春推進法』は2024年に発布された法律である。んー……、その内容は……ふぁあ。」 などと欠伸をはさみつつ適当に読んでいると
「ああ、もういいもういい。そうだな……里中、続きから頼む。」
変えられてしまった。そりゃそうか。 僕の代わりに当てられた里中さんを横目で見る。その瞬間、里中さんがこっちをチラッと見て、自然と目が合うこととなる。 そして慌てて目をそらす僕。我ながら情けない……。そんなことは気にも留めていないのか、里中さんは教科書を読み始める。
「はい。んんっ。その内容は主に『高齢化に伴う少 子化を抑制するため青春の推進』と 『青春を介助するアンドロイドの導入』の2つに分けられており――、」
音読そっちのけで僕は里中さんに見入っていた。ただ教科書を読んでいる、それだけのことなのにそれは一枚の絵画のような美しさで、透き通るような声、綺麗な二重瞼、肩甲骨ぐらいまでの夜空のような黒髪。そして少し童顔だけど、キリッと澄ました横顔。どれもテレビに出ているアイドルと遜色ないほどに綺麗だった。 本当に美人だな……、里中さんは。おかげでまったく話が頭に入ってこない。
「よし、そこまで。まずはここまでのおさらいだ。『青春推進法』とはだな……」
先生の言葉を右から左へ聞き流しながら板書に勤しむ。
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