「………先生、嘘でしょ。…お母さんは、私の為に今まで働いてくれて……まだ、何も親孝行なんて出来てないのに。」




「………残念ですが。」




「……………今日、お母さんに服見立ててあげたの。……お母さん、喜んでて…
毎日でも着るって……笑ってた……」



「……………」


ぽんぽん……と優しく頭を撫でてくれた御坂刑事の手が暖かくて、涙が出てきた。



「…………お母さん、居なくなったら、私1人なんだよ」


涙で、くしゃくしゃになった顔で、私に訴えかける彼女。


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病院に行く前に調べたところ、潮宮姫奈の父親は、二年前に事故で亡くなっている。


━━そして今回も、母親が事故で亡くなった。


胸が痛い気持ちで、いっぱいになる。


可哀想に。



「…………私達が責任をもって、君のお母さんを送らせるから、安心しなさい」


「………はい、ありがとうございます」

涙を拭い、私を見つめる彼女の目は、不安ながらも、しっかりと前に進もうとする目つきだった。



「……………これから、大変なことが起きるだろうけど、何かあったら私の方に連絡して。力になるからね」


「御坂さん、すいません。」


「……ところで親戚とかは?」


「………親戚とは、疎遠になってるみたいで……頼りになる人も、いないと思います。電話番号も知らないので。」


「そっか、困ったな……。君……これから、どうするつもりだい」


「………母の葬儀が終わり次第、今までのアパート暮らしで、高校には通わず、母の残してくれた高校資金で、アルバイトをしながら生活していきます。」


「……そっか、君は…もう遅いから帰りなさい。後は私がやっておくから。━━
林原くん、送ってあげなさい。」