永遠、オリーブ

【あたし、平山衣里。
只今、恋してまーすっ!
その相手のお名前とは……!?
紺野 樹(こんの いつき)クンだよーん(^_-)-☆】
なんてブログに書いてみた。
馬鹿馬鹿しい。
何故大切な人を態々ネット上に晒そうとでも考えたのか。
そう微塵とでも思い実行に移すなんて自分らしくない。
どうしたのだろう。
自分らしくない。
今日は変だ。
寝よう。
布団を被り自分は深い眠りにつく。
できることならば永遠にこのまま眠り続けたい。____

           *

眠っていれば傷付くことも永遠にない、感情を持つ愚かな人間に出会うことなど永遠にない。

このようなことを寝ている間までも、考えていると直ぐに朝が来る。
自分は夜が好きで朝が嫌いだ。
起きる度に「今日眠りに落ちるまで傷は何個増えていく?」と自分に問い掛けるが答えなど見つかるはずもなく。
ただ憂鬱な日々が何も変わらず永遠に続いていくのだろう。

ねぇ、神様、貴方がいるならこう問い掛ける。

何故、自分に生きることを与えたのですか。
何も思うことなく、傷が増え続け生きていて良かった、幸せだったなど思うこともなく死ぬのです。
それなら今死んだって老いてから死ぬのも変わりないじゃないですか。
死にたくない、生きたいと思っている人に自分の余生を差し上げてください。
自分は喜んで差し上げますよ。
あったって無くたって変わらないものですから。
だから、早く傷付かない広い広い空へとふわり、ふわりと翔けていきたい……
死んだところで翔けていけるかは分からないけれど、それでも今は此処から抜け出せれば、神様、貴方を信じます。自分の声を聞いてください______




澄みきった空?
嗚呼、世間的にはそう言うのだろう。
自分は澄みきっただなんて微塵とでも思わない、言い換えるとしたら、只の目に入る情景?そう言ったら、わかりやすいだろうか。

ぼんやりと流れる雲は今日は一つもない。
そんな小さなことを毎日小さな帳面に記入する。
流れる雲が多いとその日はマシな日になる。
だが、今日は雲が一つもないのだ。
珍しい。今日は特別な日になる。悪い意味で____

憂鬱な寝起きを乗り切ったら朝食は食べず、義務的に向かう場所がある。
そうだ、所謂学校。

人間、生きていくためには学問が必要だ。
だなんて貫かした奴がいるものだから、自分の憂鬱な気持ちに拍車がかかる。

嗚呼、ぐるぐるぐるぐる。歯車が回る。悲鳴を上げて。もう止めて。止めて。そんなに泣くくらいだったら止めればいいじゃない。何故止まらない?____

はっとする。
自分は何故、自分に問い掛けるの。
馬鹿じゃないのか。
そのような事をしても何も変わらないじゃないか。

そんな妄想に駆られていると背後から恐ろしい手がぴしゃりと自分の腕に触れる。

「おっはよー!衣里ぃー!……ちょっと顔色悪いよぉ!大丈夫ー?千夏(ちか)~瞬(しゅん)~来て!」

何だ、人間か。

自分は人間が怖いのではなく、自分が怖いのだ。といったら自惚れているようだがそのような訳ではない。
人間のような無様で卑猥で愚かな人間を一時でも信じていたことが怖くて、馬鹿馬鹿しくて、信じられなくて。

あ、人間が二体も近付いてきた。

自分に触れるな。

「んだよー、顔色なんか悪くねぇじゃねぇーかよぉー。」
「そーだよぉー、衣里はいつもの衣里!!衣里も行こっ!」

人間の手が自分の体に触れるとき寒気がした。
決して春の残寒に凍え震えたのではない。

それ以前に何故自分の名前を軽々しく言う?
自分は貴様と友達になっただなんて思っていない。

ふざけるな。ふざけるな。フザケルナ____

でも、きっと自分に触れる人間が居なければ傷は何倍にも増えていたかもしれない。
そう考えれば自分に触れる人間にも感謝をしなければならないのか。

でも違う、それは屹度自分の誤解。

自分に触れる人間は自分に利益がある人間としか付き合わないのだ。
だから、感謝はしなくても良い。

だが、自分に触れる人間に利益が出るような奴になるべきなのだ。

自分に付く傷を最小限に抑える為に。
あ、少し自分が異常者なのに気が付く。
自分に付く傷を最小限に抑える?そんなことを考えるなんて愚かな人間と一緒ではないか。

間違えなく自分は人間だ。
だが、身形は人間でも行動や考える事などは卑猥な人間などとは違う生き方をしてきたつもりだった。

そんな長年の生き方に慣れすぎてしまい感覚が鈍ってきたのか。
そうなると自分もまだまだ人間っ気が抜けてないのかと痛感される。

もっと毒を抜かなければ____

全部抜いてぺったんこになったら感情など全て抜け、素晴らしい幸せなひとときが過ごせるはず。

信じている。信じるものが少しでもなければ打っ倒れそうだった。苦しい。助けて。消えたい。
抜け出したい。自分は未だに弱い。強くならなければ至福の場所へとは永遠に行けないのだ。
?、待て。

逃げ出したいと思っている奴が強くなれるのか?

そう自分に問い掛けたら物凄い頭痛がするので頭をぶんぶん振って思考を無理矢理中断させた。

あ、ヤバい、余りにも頭を振りすぎたせいか5,6人程此方を見ている。
何故自分を見るんだ。哀れな目で自分を見るな。自分の方が醜いものだと気付け。注目するな。
苛立ちは収まらない。

はっ、いけない、苛立ってる気持ちをそのまま顔に出してしまった。
醜い目は更に細くなり自分の心は……泣いている。

「わっ、衣里!何、頭振ってんの!今日の衣里……変だよぅ」

好きな奴の気を引くために自分の心配していい子ちゃんアピールしてるのが見え見えだ。
利用するな。

「……大丈夫。あっ、ちょっとぼーっとしてただけ。あははっ、心配しないでぇー。」
適当に言っておいた。

「そーなの、良かった!あっ、ヤバいヤバい遅刻するぅー!走んなきゃ間に合わない!」
「えっ、まじか!千夏!藍(あい)!衣里!走んぞー!」

「あっ、はぁい~(*^_^*)」
女二人は急に女々しく声を張り男のあとを追いかけて行った。

自分も行く。行かないと不安が後から後から襲ってくる。息切れするけれど不安に押し潰されるよりはマシ。

女々しい臭いのする教室に入ると欲望に溢れる人間が臭くて吐き気がした。が、慣れている。

席に何食わぬ顔で座るとじゃれ合っている奴の左手が自分の腕に当たる。
「わっ」
もう、嫌だ。何故、声を出すのだ。露骨に嫌がってるようではないか。嫌なのは確かなんだけれど。相手に悪い気もする。悪気はなかったと思うから。
「あー、ごめごめー!まさかそんなに嫌がるとはねぇー、ハッハッハッハッ」
何だ、こいつ。取り敢えず自分は悪くない。自分にしては珍しく苛立っていない。逆に笑い飛ばしてくれてすっきりした。
「いーえ」
取り敢えず当たり障りない返事をしておいた。
自分は何かに挑戦するようなちょっと微笑んだ。相手も微笑む。
わっ、なんかいいかも。ちょっぴり顔を赤く染めたけれどそんなもの直ぐにいつもの不気味なくらい青白い顔色に戻る。

そんな自分を見て自分の腕に打つかってきた奴はつまらなそうな顔をしている。

なんだこいつは。何処にでも居そうな人間。それが第一印象だった。