「何が不幸自慢かっっっ!」

血を飛び散らせながら狒々が喚く。

「おのれ如き小僧に、長年化け物として人間に虐げられたわしら人外の気持ちなど「わかんねぇよ」

狒々が言い終わらないうちに、龍太郎は口を挟む。

「詳しい事情は知らんし、聞くのも面倒臭ぇ!行くとこねぇんならお前も天神学園に来い!」

「……何…?」

狒々が龍太郎を見上げる。

「お前だけ不幸みたいな顔してんなら、天神に来りゃあいい。似たような奴がいて、結構楽しいぜ?」

ニカッと笑う龍太郎。

「…………フン」

痛みを堪えて立ち上がり、狒々は教室の窓際へと移動する。

「数百年も人間を毛嫌いして生きてきたわしが、今更人間と同じ学び舎で共存じゃと?…笑わせるな」

「そうか…ま、いつでも来な。天神学園は入学も転入も随時受付中だからよ」

「……食えぬ小僧じゃ…臥龍の宿主は」

その横顔が、笑ったような気がした。

が、確認する間もなく、狒々は窓の外へと跳ねて出て行く。

頭目を失った今、この殴り込みは天神学園の勝ち戦に他ならなかった。