「いいえ?」

啓太はポケットの中でアリスカの手を握り締める。

「アリスカさんが繋ぎたいなら、僕は全然構いません」

「っっっ…」

うっ、と言葉を詰まらせるアリスカ。

「な、何か上から目線なのが気に入らないなぁっ」

「あ、ご、ごめんなさい、気を悪くしましたか?」

「……」

黙ったまま、視線も合わさずにアリスカは歩き出す。

しかし、ポケットから手は出さない。

無論、手も放さない。

放さないまま。