「……」

真夜中の天神学園。

日が沈むと急に夜気は冷え、すぐに凍えるような気温へと変貌する。

そんな中でも、3年のアン·レスクレは寒そうな顔すらせずに中庭のベンチに座っている。

傍らには、蒼黒いモジャモジャした羽のない鳥のような生物。

彼は言う。

「元気ないねぇ、アリトン」

アリトンとは、レスクレの真の名前である。

目元の隈、何だか不健康そうな顔色。

病弱そうな彼の正体は、八人の下位王子(Eight Sub Princes)と総称される有力な悪魔の一人である。

またオリエンス、パイモン、アマイモンと共に、四方を司る四大悪魔の一人ともされる。

アレイスター·クロウリーの『777の書』によれば、四大元素の『水』に対応する西の魔王とされる。