「奥方の方はどうしてる?」

龍太郎の言う奥方とは、翡翠の妻である天神学園体育教師·夕城 こはく(ゆうしろ こはく)の事。

現在は双子の瑠璃(るり)とめのうを出産した産休の為に夕城の屋敷にいる。

「まだ子供達が幼いしな…それに新しい居候も増えて忙しくしている」

「居候?」

「ああ…こはくの方の本家…琴月流(ことつきりゅう)からの刺客だ」

琴月 琴子(ことつき ことこ)。

黒い刀身を持つ刀、酷奏丸(こくそうまる)を愛刀とする小柄な娘だ。

「おいおい、いいのかよ!刺客って、そんなのと一緒にいさせて…」

驚く龍太郎だが。

「構わん…」

パシャッと。

翡翠は湯で顔を洗う。

「気性は荒いし、こはくを始末すると公言して憚らん小娘だが…瑠璃とめのうの世話をよくしている…あれは案外性根は悪くなさそうだ…」