「……」

騒々しい生徒達から少し離れた場所で、翡翠はその逞しい体を湯に浸ける。

少し熱めの湯の中、揉み解すようにするのは左腕。

タイマントーナメント決勝で、龍太郎の浸透勁を受けて痣が残っている。

今回の温泉旅行に妻を置いてまで参加したのは…正確には妻に行って来いと勧められたのは、この傷を湯治で癒す為だ。

その背中に。

「痛むのか?」

龍太郎が声をかける。

「…こはくは大袈裟なのだ」

隻眼でチラリと視線を送り、翡翠は左腕から手を放した。

「痣が出来ているだけで、痛みなど全くない。刀を振るうのにも支障はないしな」