溜息をつき、誠一郎は無表情のまま龍太郎を見た。

同時に立ち昇るように、姿を現す怪異。

おぞましい漆黒の触手が、嫌悪を感じさせる動きで誠一郎の周囲をのたうつ。

「うっ…」

校庭で見ていた日音子やリグニアが口元を覆った。

校庭にまで漂ってくる、強烈な溝の臭い…。

「兄貴が龍太郎先輩を嫌っていたのも分かる気がします…本当にしつこいですね、先輩は」

「おぅよ、俺は自分の思い通りにならねぇと気に入らねぇかんな」

龍太郎はニヤリと笑った。