リング表面が焼け焦げる。

ダメージを受けるのは銀だけではない。

炎を放つ龍太郎の全身も燻っていた。

布に過ぎない龍太郎の空手着や銀のローブも、少しずつ燃えて千切れていく。

そんな凄まじい熱量の炎を、暗黒物質は延々と吸い込み続ける。

並の人外ならば一瞬にして消滅するほどの熱量を、もう1分近く吸収し続けている。

この暗黒物質は…禁書は本当に無限の貪欲さを持っているのではないか。

そう思わせるほどの光景。

しかしそれでも。

「おぉぉおぉおぉぁあぁぁあぁあぁぁあぁあぁあっ!」

龍太郎は咆哮する!

まるで彼自身が、龍と化したように!

その咆哮に共鳴したように、出力を上げる炎!

やがてその炎は。

「うあぁあぁあぁあぁあぁぁぁっ!」

銀を真紅の輝きの中に吸い込む。

眩い光。

誰もが目を眩ませる中。

「…………」

次に観客が見たものは、全身から白煙を上げながらリングに横たわる銀の姿。

…彼の身を侵蝕していた黒いタトゥーは消えていた。

そして彼の目元には、いつもの星型のホクロ…。

「ありがとな…」

横たわったまま、銀は呟く。

「禁書の奴…悪食が祟って食いすぎらしいぜ…魔力を放出し尽くして…また封印に戻ったらしい…」

禁書の力を使い尽くした銀は、いつもの彼自身に戻っていた。

「お前の勝ちだ…救われたよ、龍太郎…」