反対側のリング下。

「銀先生!」

試合前の激励にコスプレ部の面々が近づいてくるが。

「来るなよ!」

その行為に、銀は怒号を上げる。

らしくない。

いつも笑みを絶やさない銀とは思えない、余裕のない態度だった。

…全身を覆う紋様のような黒いタトゥー。

額には汗が浮かび、呼吸も整わない。

これまでの試合のダメージもあるだろうが、何より禁書の制御に精神力を削り取られている為。

もう封印の為の鎖はなくなってしまったのだ。

蓄積した魔力を放出するまで、星型のホクロの状態に戻す事は出来ない。

…この決勝の舞台で、惨劇を繰り広げてしまう事になりはしないか。

龍太郎を殺してしまうなどという事になってしまわないか。

銀の懸念はそれだけだった。