「胸の傷はどうだ、丹下」

リング中央、龍太郎と対峙した翡翠が言う。

「問題ねぇ。試合にゃ何の影響もねぇよ」

答える龍太郎。

「そうか…」

無表情だった翡翠。

その邪眼が、不意に細まる。

「今年はより深く抉ってやる…」

並みの者ならば、失禁するほどの戦慄を感じるであろう台詞。

閻魔と称される男の言葉に、身も凍る恐怖を感じるであろうそれを。

「じゃあ旦那の左腕…今年は使い物にならなくしてやんよ…」

龍太郎は真っ向から受け止めて尚、反論してのけた。