「うわ…」

控え室。

拓斗の空手着をはだけた喜屋武は、思わず声を上げる。

龍太郎の拳を受けた彼の腹筋には、赤黒い痣が残っていた。

「これが龍太郎君の浸透勁の威力…」

「いや、これはボディブローによるものだな…浸透勁は外傷を一切与えず内部にダメージを与える技だ。昨年の決勝で嫁馬鹿に痣を残したのは、丹下の浸透勁の完成度がまだ低かったからに過ぎん」

龍娘が説明する。

つまり、今年の龍太郎は昨年よりも浸透勁に磨きをかけているという事。

「やっぱり悪人だ龍太郎先輩めぇっ、また五所川原ろーりんぐぶろーでぇえぇえぇっ」

可愛らしく憤慨する花音。

まだ根強く残る『龍太郎悪人説』。

「でも…」

傷を残されたにもかかわらず、拓斗はどこか満足気だった。

「このくらいの修行では簡単に超えられない壁のような存在の龍太郎君でいてくれて…何だか嬉しいです…」